「人生100年時代」と言われ、超高齢化社会を迎えて親の世代が認知症を発症するリスクが高まっています。
高齢な親は、認知症だけでなく、ケガや病気などで行動範囲が狭くなったり、判断能力が低下したりするリスクも高まります。そうした高齢な親の財産を、どの様にして守るのか、結構悩ましい問題です。

結論としては、金融機関が提供してる信託商品が、親の財産を守る一番の方法だと言えそうです。

また、振り込め詐欺などの悪徳商法から、親の財産を守る方法にも適用できる商品もありました。
今回は、そうした高齢な親の財産の管理方法について記載します。

親の状態で変わる財産管理の方法

現在の親の健康状態によって、親の財産管理の方法にバリエーションがあります。

  (1)単独で外出が出来ない
  (2)判断能力が弱った
  (3)認知症と認定された

まずは、ザックリと表形式で概要を示します。

親の状態 利用する制度 財産の管理方法
(1)単独で外出が出来ない 任意代理制度 金融機関に「代理人届」を提出し、子供が銀行と取引
(2)判断能力が弱った 解約制限付信託 預金の引出しは、子供の同意が必要
(3)認知症と認定された ①成年後見制度
②後見制度支援信託
③後見支援預金
①家庭裁判所に申請。財産の取引全般を成年後見人がする
②③家庭裁判所の指示書がないと引出し不可

それでは、各々の財産管理方法を詳しく見てみます。

(1)単独で外出が出来ない

親の健康状態が思わしくなく、単独で外出が出来ないような場合は「任意代理制度」を利用するのが一般的なようです。

利用する制度

任意代理制度」は、金融機関(銀行/証券会社)に「代理人届」を提出して、親に代わって子供が金融機関との取引を代行して、金融財産を管理する方法です。

財産の管理方法

最初に、親の取引口座のある金融機関(銀行とか証券会社)の店舗で「代理人届」の書類を提出します。
 (代理人届は金融機関に届け書類が備わっているのが一般的です)
口座名義人である本人(親)と、代理人(子供)が住所、氏名などに記入・押印し「代理の取引内容」を確認し申請します。

「代理の取引内容」は金融機関(銀行/証券会社)によって異なるので、各金融機関に事前確認するのがベターです。
一部の金融機関の例になりますが、
 ・みずほ銀行 :代理人に委任したい預金口座の一切の取引ができる
 ・三井住友銀行:1回当たりの出金限度額を申請する
 ・野村証券  :株式、投資信託、債券などの証券取引は「取引銘柄、売買時期まで代理人で可能」
 ・SMBC日興証券:現物取引に限定し「信用取引は代理できない」

また、銀行・証券会社ともに「口座の解約は代理人は出来ない」とするところが一般的なようです。

(2)判断能力が弱った

親の健康状態が、まだ認知症ではないが、判断能力が弱ったような場合は「解約制限付信託」を利用するのがいいようです。

利用する信託商品

「解約制限付信託」は解約に制限が付けられている信託商品で、日常生活に当面必要のない、まとまった預貯金を信託銀行に口座を開設して預ける方法です。

財産の管理方法

信託銀行に口座開設して「解約制限付信託」としていったん預けると、払出しには「3親等以内の成人の親族か、弁護士、司法書士の同意が必要」という、払出しには厳しく制限が加えられた信託商品です。

この方法は、振り込め詐欺などの悪徳商法から、親の財産を守る方法にも適用できます

金融機関によって最低受託金額、信託銀行の手数料など商品内容が相違します。下記は主な商品の例です。

信託銀行名 最低受託金額 管理報酬
(銀行の手数料)
〇払出し条件
△払出し用途
みずほ信託銀行 3,000万円 10,800円/月額 〇3親等以内の親族か、弁護士の同意が必要
△定時定額払いや暦年贈与などの組合せが可能
三井住友信託銀行 500万円 無料 〇3親等以内の親族の同意が必要
△定時定額払いは同意不要
三菱UFJ信託銀行 1,000万円 無料 〇3親等以内の親族か、弁護士の同意が必要
△使途を有料老人ホームの入居一時金などに限定

 出典元:上記一覧表の情報は、下記の各サイトから一部引用しました。
  ➤みずほ信託銀行 解約制限付信託「選べる安心信託」
  ➤三井住友信託銀行 解約制限付信託「セキュリティ型信託」
  ➤三菱UFJ信託銀行 解約制限付信託「みらいのまもり」

(3)認知症と認定された

親が認知症と認定され、判断能力がほとんど無くなっているの場合は「成年後見制度」を利用するのが適切なようです。

利用する制度

「成年後見制度」は、親(本人)以外の回りの者(一般的には親族)が家庭裁判所に、成年後見制度を利用する旨の申請を行います。

家庭裁判所が、書類の審査と申請人の面談を実施したのち、成年後見人を選任します。成年後見人には、親族又は弁護士、司法書士などが選任されます。
裁判所が決定することなので一概には言えませんが、親族が後見人になるケースは「親の財産が自宅と預貯金が中心の場合」と言われています。

財産の管理方法

家庭裁判所が選任した成年後見人が金融機関に届け出て、預貯金の預入・払出や株式の売買など、親(被後見人、又は本人とも称す)の財産を管理します。

成年後見人は、親の財産(土地・家屋・金融資産の日々の預入・払出・残高等々)の管理状況を、すべて家庭裁判所に報告する義務が課されています

この日々の財産管理と報告義務は、結構大変な業務です。従って、弁護士・司法書士などが成年後見人に選任された場合は、月々の報酬が発生します。その報酬は親(被後見人、本人)の金融資産から支払うことになります。

後見制度支援信託・後見支援預金での財産管理

成年後見制度の義務である、親(本人)の財産を家庭裁判所に報告すると、ある時、家庭裁判所から出頭依頼があります。
その内容は、「後見制度支援信託」を利用して預貯金の多くを銀行の信託口座に預ける(振替える)ように求められるケースです。

「後見制度支援信託」を使用する条件は、
親(被後見人・本人)の預貯金(土地・家屋は除く)が、ある一定金額以上ある場合は、日常的な支払いに必要な200万円程度以外は、銀行の「後見制度支援信託」という信託口座を開設し、そこに振替えることを、家庭裁判所から求められます。
  ・東京家庭裁判所管内は500万円以上の預貯金がある場合
  ・東京以外家庭裁判所管内では1,200万円以上の預貯金がある場合

いったん、この信託口座にお金を預け入れると、引き出すにはその都度、家庭裁判所の「指示書」が無いと引出し出来ない仕組みになっています。 そうです、信託口座に預け入れたお金は、ほぼほぼロックされた状態になります。

同じ様な仕組みとして「後見支援預金」というものがあり、信用金庫・信用組合を中心に取り扱っています。

後見制度支援信託を扱う、主な銀行の商品一覧です。

銀行名 最低受託金額 信託報酬
(銀行の手数料)
みずほ信託銀行 1円 原則無料
(契約時に受託金額が1,000万円未満は32,400円が必要)
三井住友信託銀行 1,000万円 無料
三菱UFJ信託銀行 1,000万円 無料
りそな銀行 5000円 契約時に162,000円
毎月3,240円

 出典元:上記一覧表の情報は、下記の各サイトから一部引用しました。
  ➤みずほ信託銀行 後見制度支援信託
  ➤三井住友信託銀行 後見制度支援信託
  ➤三菱UFJ信託銀行 後見制度支援信託
  ➤りそな銀行 後見制度支援信託

私の体験

両親とも認知症

私の場合、10数年前に両親が同時に認知症を発症しました。その時、両親の年齢は父親82歳・母親81歳でした。

父の葬式

私の両親が認知症を発症したあと、暫くは私の自宅で介護していましたが、私達夫婦と両親の共倒れのリスクから、介護付き有料老人ホームに両親とも入所させました。父親は6年後に亡くなりましたが、父の葬儀の時に親戚から「遺言信託」を銀行と契約しているから、すぐに銀行に問合せしなさい。との話がありました。 初めて聞く話でした。

圭一
父は生前、遺言信託の話をなんで親戚にして 私にしなかったのか?
  ・・信用されていなかったのか?!!
遺言信託

葬式が終わって、信託銀行に問い合わせたところ、父親・母親ともに公正証書の遺言書を作り、信託銀行に遺言書の管理を委託し、さらに遺言書の執行までも信託銀行に委託する契約を締結していました。

圭一
遺言書を銀行に預けて、遺言信託を契約している??
 ・・なんだなんだ!! オヤジに隠し子でも いるのか??
   「寝耳に水」とは、この事かと思いましたね・・
成年後見人

父の遺言書を執行するためには、遺産相続人(母と私)が「信託銀行を遺言執行人に任命する手続き」が必要になりました。

私は、その意思表明(任命する書類に署名して実印を捺印)出来るのですが、母は認知症のため意志表明が出来ないと信託銀行が言い出しました。

そこで、母を被後見人として、成年後見制度を家庭裁判所に申請し、私が成年後見人になりました。
(私が、申請した当時は80%程度、親族が後見人になるケースでしたが、最近は、いろいろトラブルが多く弁護士・司法書士などの専門家の後見人が70%以上を占めている模様です)

信託銀行が遺言執行人

母(被後見人)の代理人として、私(後見人)が「信託銀行を遺言執行人に任命する手続き」が終わり、遺言執行を完了しました。
(非常に遠回りしたせいか、父が亡くなってから遺言執行完了まで、約11ヶ月近く掛かりましたね!)

非常に楽をした事があります。それは、
信託銀行が遺言執行人なので、父の預金口座の閉鎖手続き等の、非常に煩わしい手続きに関しては、全て遺言執行人である信託銀行が実行してくれました。 私は何もすることもなく非常にラクチンでした。

その後、信託銀行が「遺言執行完了書」を完璧に作成してくれたおかげで、税務署等への申告なども非常にスムーズだったことを記憶しています。

後見制度 支援信託

父の遺言で、預貯金はすべて母に相続させることになり、母の預貯金が600万円をちょっと超える状態になりました。

そしたら、家庭裁判所から連絡があり、その指示で「後見制度支援信託」を利用して信託銀行に口座を開設し、600万円を預け入れることになりました。 これは、母(被後見人)のまとまった預貯金を、ほぼ凍結することを意味します。

当時、親族後見人とか専門家の後見人(弁護士・司法書士など)が、本人(被後見人)の金融資産を着服するというトラブルが続き、大きな社会問題となりました。「後見制度支援信託」制度は、それらを防止するための新しい制度だったようです。

後見制度支援信託を利用して信託銀行に預けた金融資産は、家庭裁判所の「指示書」がないと引き出せない仕組みとなっているため、親の大切な財産を完全に凍結できる優れた制度だと思いました。

両親が認知症を発症してから、母が亡くなるまで約12年間は、結構長く辛い体験だったり、その時々で人生初めての体験をしました。
その体験は、ある意味、私の財産になっているような気もします。

まとめ

今回は、親の健康状態(3パターン)から考察した、親の財産を守る方法(3選)について記載しました。

 (1)単独で外出が出来ない : 任意代理制度
 (2)判断能力が弱った   : 解約制限付信託
 (3)認知症と認定された  : 成年後見制度/後見制度支援信託/後見支援預金

私は両親の認知症による介護、遺言信託、成年後見人としての資産管理&家庭裁判所への報告、後見制度支援信託の適用手続き 等々を、ひととおり体験しました。
これらの体験を通して「高齢な親の財産を守る」ことの重要性を認識しているつもりです。

体験した事柄と不足する知識を調査しながら今回の記事を記載しました。この記事が、あなたのお役に立てれば幸いです。

以下は当サイト内の記事です。参考になるかもしれませんので、宜しかったら見て下さい。