現代は、超高齢化社会を迎え、親の世代が認知症を発症するリスクが高まっているといえます。

今回の記事は、当サイトのテーマである「定年退職後を豊かに暮らす智恵」とは対極の話になりますが、もし親の世代が認知症になった場合に、その事態とどう向き合うか、私の体験を含めて記事にしました。

認知症とは?、その患者数は?

まずは、認知症とはどのような病気なのか、その発症率はどのくらいなのか、厚生労働省のサイトを見てみます。

認知症とは?

認知症とは「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が慢性的に減退・消失することで、日常生活・社会生活を営めない状態」を示し、後天的原因により生じる知能の障害である。

現在では、まだ多くの認知症疾患の原因は不明のようですが、いずれにしても、認知症の最大の危険因子は「加齢」です。
 引用:厚生労働省 知ることからかじめよう みんなのメンタルヘルス

後述しますが、私の両親は80歳前半での発症でした。全ての事例に当てはまるわけではないと思いますが、親の世代が後期高齢期に差し掛かったころから、認知症発症のリスクが高まると考えた方がよさそうです。

認知症の患者数推計

認知症の発症率はどのくらいなのか、これも、厚生労働省のサイトを見てみます。

65~69歳での有病率は1.5%ですが、以後5歳ごと倍に増加し、85歳では27%に達します。
現時点で、我が国の65歳以上の高齢者における有病率は8~10%程度と推定されています。過去から未来における日本の推定認知症患者数が下表の通りです。

認知症を有する高齢者人口の推移

患者数 65歳以上人口に対する比率
1995年 126万人 6.9%
2000年 156万人 7.2%
2005年 189万人 7.6%
2010年 226万人 8.1%
2015年 262万人 8.4%
2020年 292万人 8.9%

2010年では200万人程度といわれてきましたが、専門家の間では、すでに65歳以上人口の10%(242万人程度)に達しているという意見もあります。今後、高齢者人口の急増とともに認知症患者数も増加し、2020年には325万人まで増加するとされます。

 引用:厚生労働省 知ることからかじめよう みんなのメンタルヘルス

別な資料によると、認知症の発生率は75歳を過ぎると急激に上がり、90歳を過ぎると70%の人が発症すると言われています。

超高齢化社会を迎え、自分の両親が後期高齢期に近づいたら、認知症発症のリスクが高まると考えていた方がよさそうですね。

『親の認知症』と、どう向き合うか?

私の場合、定年退職前に両親が同時に認知症を発症しました。その時、両親の年齢は父親82歳・母親81歳でした。

当時、両親が認知症を発症した現実となかなか向き合うことができませんでした。なんで自分の身にこんな厳しい現実がつきつけられるのかと、悩み苦しみました。その当時のことを思い出すと、今でも胸が苦しくなるような感覚になります。ほんとに現実は厳しいものです。

最近「看る力 アガワ流介護入門」という本に出会いました。エッセイスト阿川佐和子さんと大塚宣夫医師 共著の文春新書です。

この本に書かれている内容と、私が両親の認知症介護の体験を通して共感した事について、本の一部を引用しながら「親の認知症と、どう向き合うか?」について触れていきます。

最初に、大塚宣夫 医師が語る「認知症とは」の説明が明解なので、そのまま引用します。

認知症とは、ひと言でいえば記憶の障害があるがゆえに、自分の中に入ってきた新しい情報をうまく処理できなくなっている状態とも言えます。
人間は過去の経験を記憶という形で残しています、それと照合しながら、今起きていること対して、どう行動すべきか判断をする。けれども認知症は、その過去の記憶にうまくアクセスできない、あるいは即座につながらなくなっている状態にあるのです。(中略)

認知症にはいくつかのタイプがあり、特に多い二つのタイプは、
 ・脳血管性認知症
   脳血管が詰まったり破損したりすることで発症する認知症
 ・アルツハイマー型認知症
   脳神経細胞が死滅し、脱落することで発症する認知症

非難しない/怒らない

両親を介護している我々夫婦からすると、両親は理屈に合わない発言や行動をいつもしているように見えました。

これも、大塚医師によると、患者本人にとっては、残った記憶と情報をもとに発言・行動をしているので整合性があっている。
だから、本人がうまく処理できなくても非難しない、とがめたりすることは厳禁のようです。
本人としては少ない記憶を駆使して自分なりにベストの判断をくだして行動しているから、怒られる意味がわかならない

従って、バカにしない、非難しない、怒らない という安心感を与えることが大切とのことです。

現実問題として、日々の介護生活の中で、上記の様な事を実践するのは大変難しいことです。しかし非常に大切なことでもあります。

介護は長期戦

私の両親が認知症を発症して、暫くは私の家に同居させて介護をしていましたが、それも共倒れの危機から有料介護付老人ホームに入所させました。両親が他界したのは、それから父親は6年後、母親は10年後のことでした。

大塚医師によると、介護は長距離走、マラソンのようなものです。最初から全力疾走したらゴールできません
将来どのような展開になるか、まったくわからない。だから、手抜きをしなさい、信頼できる交代要員を作りなさい、経験者を頼りなさい とのことです。

私の場合は、老人ホームに入所させたことで、我々夫婦の介護による身体的な負担は少なくなりましたが、老人ホームに世話になる期間が長期に渡ったことで、経済的な負担は膨大なものになりました。

介護した経験からすると、先が読めない状態が長期に渡ると考えて、全力でやらない、手抜きをする、専門家(ケアマネージャー等)に相談する、などのことを積極的に取り入れて、介護する側が精神的・身体的・経済的に疲弊しないようにすることが大切だと思いました。

施設に預ける

かつては認知症の親を施設に預けるのは、親不孝の代名詞のように言われていた時代がありました。でも現在は、この考え方は古い価値観だと思います。

介護する側、介護される側の両方が疲弊して共倒れになっては、本末転倒です。

老人ホームに入所させた当初は、父親が「何故こんな所に入れた」と騒ぎ立てたこともあり、その時は自分はなんて親不孝なのだと、一時は後悔したこともありました。しかし、もし私の両親を、経済的理由から老人ホームに預けていなければ、我々夫婦は完全にギブアップしていたと思います。

両親を見送った現在では、認知症の両親を老人ホームに預けたことは親不孝ではないと、信じています。

後ろめたさを持つ

本の中で、阿川佐和子さんは「後ろめたさ」の重要性を、次のように語っています。

実は、母に「ちょっと仕事が忙しくて・・・」と言いながら、本当はゴルフに行っている事もありました。その「後ろめたさ」のせいで、母に優しく接することができた。
「私はこんなに頑張っているのに!」って不満だけがつのると、介護の疲れも倍増するでしょう?
「本当は私、ちょっとズルしているんだよね。ヒヒヒ」っていうのを、心の引き出しの中にひとつもっていると、余裕ができる。(中略)
息抜き上手は介護上手。なんてね(笑)。

大塚医師によると、介護は完璧にやろうとすると介護する側も消耗しますが、介護される方も実は消耗する。
介護の素人は、時々は息抜き・手抜きをしながら介護60点主義でいけばいい。介護は消耗するので多少の嘘は許されると、語っています。

私の経験からも、介護をいくら完璧にやっても誰も評価してくれません。というより、介護される側からダメ出しされることの方が多く、ほんとに精神状態を正常に保つことが難しいことです。
介護は、全力でやらない、時々手抜き・息抜きする事の大切さは、身をもって体験しました。
 

本を紹介しておきます。

 題名:「看る力 アガワ流介護入門」 (文春新書) 新書
 著者:阿川佐和子さんと大塚宣夫医師の共著
 出版社:文藝春秋

最後に

ここまで書いた内容が、全ての事例に当てはまるとは思いませんが、当サイトを見られている方々のヒントになれば、との思いから記事にしてみました。
 
最後に、以下のサイトを紹介します。
沼田クリニックのサイトで、認知症の方との接し方など、沢山の事例が書かれています。
参考になることが多いと思いますので、宜しかったどうぞ。
 引用:認知症の方との良い接し方、上手な対応方法、具体的な対処方法など